フェデリコ・フェデリチのらくがきちょう

いくら落書にはげんでみたところで、余白を埋めつくしたり出来っこない。──安部公房『箱男』

2021/11/17

『Another』の感想です。

 

内容を軽く振り返ると、まず第6回は恒一が見崎鳴と同じ「いないもの」になる回、次の第7回は先生が自殺して「現象」が止まらないならと「いないもの」を止める回、そして第8回は水着回です。

アニメって、「水着回」という言葉があるぐらいには、そういう回があるんですが、まさか『Another』にもあるとは。

 

ここら辺ってミサキメイの正体を巡るミステリーが解けて、「死者」は誰かという謎へと移行する橋渡し的な部分なんですよね。よく覚えてないんですが、次かその次ぐらいにならないと、「死者」を死に帰すという「現象」を止める方法にたどり着けなくて、現状では「死者」を見つけたところでどうしようもないはずなんですよね。だから「死者」が誰か気になりつつ「現象」を止める方法を模索しているところで、第7,8回はまさにその回です。

 

話を戻して第6回ですが、ここは榊原恒一が見崎鳴と同じ「いないもの」になる回なのですが、改めて観るとすごいですね。榊原恒一が見崎鳴に接触しすぎて「現象」が止まらず6月の死者が出てしまったので、二人まとめて「いないもの」にする作戦に出ます。恒一の想像の中でテスト中に見崎鳴と踊るシーンが印象的ですけど、この回全体を通してすごいなと思うのは、恒一と見崎鳴が「いないもの」である、つまりお互いの存在を認めるのはお互いだけという状況が作られているところですね。見崎鳴もホラー要素が抜けて一段と可愛く見えるし、左眼の義眼を見せて「綺麗だよ」なんて言うシーンもあるし、この回は今までの中で際立ってすごいと思います。ミステリアスな部分も含めて見崎鳴だと言う人もいるかもしれませんが、幽霊かもしれないという疑いがなくなっただけで謎めいた少女であることには変わりはないしその魅力は落ちていないと僕は思っています。まぁこんな素敵な回も先生が刃物を取り出すシーンで終わるのですが。

 

それでその次の第7回は、刃物を取り出した先生が自分の喉をかっ切って死ぬ回です。このシーンの作画かなり気合い入っているし、生徒のリアクションまで丁寧に描かれているんですよね。先生が倒れると大半の生徒は教室から逃げ出して、そうでない生徒は呆気にとられて動けなかったりゲロ吐いたりしているなか、榊原恒一は先生の死体を確認しに行くんですよね。見崎鳴も。やっぱりこの二人の恐怖に対する耐性が強いなと思います。

そしてこの回では7月の死者が出たということで、二人を「いないもの」にするという作戦でも「現象」は止まらないということを確認するわけです。そういうわけで別の「現象」を止める方法を模索しようというのですが、今観ると重要だなと思うのが、望月少年とその姉を通じて「現象」を止める方法があると知るところではなく、望月少年が姉に3年3組の話をしたことを後ろめたそうに言うところなんですよね。3年3組のことは家族にも話してはならないというルールがあるのですが、これって恒一が怜子に話しているのと矛盾するんですよね。つまり三神先生=怜子という仕掛けのヒントがここにもあったということです。恒一は最初事情を知らないから怜子に相談していたんだという可能性を、次の回で怜子が同行することで否定しているのも面白い。まあ一応、対策法の手掛かりとなる人物の同窓生だからという言い訳もありうるんですが、それにしても関わりすぎですよね。この叙述トリックに関する部分は純粋にすごいなと思います。

 

そしてその第8回は水着回です。その手掛かりとなる人物が海の近くにいるからという言い訳で水着回をします。しかも見崎鳴の家の別荘もその近くにあるという言い訳で見崎鳴まで登場します。ヤバすぎ。でも水着回に浮かれて喜ぶオタクを許さないのが『Another』です。夜見山市を抜け出せば「現象」から逃れられると青春しているところで死んでしまうのですから、キャラたちにとっても観ている人にとっても衝撃だったはず。

 

今回の3話を振り返ると、橋渡し的な部分だからこそ、少し緊張が解けつつも死によってしっかり引き締めていたと言えそうですね。次回からも楽しみです。