フェデリコ・フェデリチのらくがきちょう

いくら落書にはげんでみたところで、余白を埋めつくしたり出来っこない。──安部公房『箱男』

2021/12/01

『Another』の感想です。

次回、次々回で終わるため、4話まとめて感想を書くわけにも3,1と感想を書くわけにもいかないという消極的な理由で書きます。

 

前の感想で、橋渡しだとずっと言っていましたが、「死者」は誰かをめぐる=「現象」を止める展開は結構終盤のほうでしたね。まあ確かに「死者を死に帰す」という方法を知ってしまえばすぐにサバイバルゲーム的な流れになるのは目に見えていることなので、その方法が明らかになるのが終盤であってもおかしくないですね。

 

第9話で手掛かりを見つけて第10話である今回でその真相を知るという流れなわけです。よく言われていることだと思いますが、昔と最近ではアニメの展開の速さに差がありますね。10年代のアニメを昔のものと称するのは、どうかと思いますが、ホラーテイストということもあり、たっぷり時間が使われて「間」が確保されているのは確か。キャラクターが言い出そうとして言いたくなくて言い淀むシーンがわりと好きでいいなと思います。

 

今回の2話で特に印象に残っているのは、回想の中で藤岡未咲が登場するシーンですね。このシーンいつ出てくるのだっけとずっと頭の片隅で思いながら観ていたほどには、放送当時も印象に残っていました。見崎鳴が仲の良い人物と親しげにしているのが珍しいからでしょうね。

育ての母と娘の歪な関係と双子の姉妹の関係がかなり面白い。元々、見崎鳴と藤岡未咲は双子の姉妹なのだが、同時期に妊娠していたおばである霧果が死産してしまい、その精神的な傷を癒すためにに鳴が見崎家に養子に出されていた。霧果としては鳴が藤岡家に近づくと自分から離れてしまうと考えたのか産みの母にも藤岡未咲にも会わせたがらない。そこで鳴を離したくないという思いから携帯電話を渡すのだが、鳴はその携帯電話を使って未咲と会話をする。

鳴って携帯電話のことをいつかの回で「いつでもどこでも繋がってしまうから嫌な機械だ」というようなことを言っていたんですよね。見崎鳴は「繋がっている」ことを良しとしない考え方をしているんですが、そこに一つ例外があって、実の姉妹である未咲とは繋がっていることを、明確には語っていませんが恐らく、良いことだと捉えていました。このような一貫性のなさに僕は人間的なものを感じていいなと思います。

そして娘を藤岡家から遠ざけたくて渡した携帯電話がかえって藤岡未咲と近づけてしまう。このままならなさも携帯電話=人と繋がることを形づくるものなのかなと思います。

 

鳴の姉妹との関係を考えると、直前で恒一の母と怜子が似ていると評していたシーンも思うところがあったのかもしれません。「嬉しそうだった」と言うと少し自分に都合を良すぎる捉え方かもしれませんが、少なからず自分と未咲の関係を投影していた部分があったんじゃないかと今になって思いますね。

 

ほっこりしたところで次回から夥しい数の死が待っています。それでは