フェデリコ・フェデリチのらくがきちょう

いくら落書にはげんでみたところで、余白を埋めつくしたり出来っこない。──安部公房『箱男』

2021/12/15

『Another』の感想です。

今腰が痛いので座るのも辛くてスマホで書いてます。早く治ってほしいね。

この最後の2話は一番たくさん人が死にます。それにともなってキャラ同士の感情が爆発します。まあ感情の一つでも爆発しないと人殺しなんてできませんからね。

まず勅使河原が風見を突き落としてしまうところから始まります。人が死にまくるんで(というか人を殺しまくる)感覚が麻痺してくるんですが、最初に「死者ではないかもしれない風見を殺しちまった」と動揺するシーンがあるとヤバいことが起きてるぞというのが引き立ちますね。

この回ってとにかく密度が濃くて狂った管理人が火をつけて生徒を殺しまくったり、杉浦が放送で見崎鳴を殺すようにけしかけてサバイバルゲームのようになったりが1話で起きているんですよね。生徒同士の殺し合いだけならまだしも、管理人が暴れ回るせいで複雑というかあちこちで事件が起こっていますよね。

このアニメって1話1話のスピードが割とゆっくりなので、クライマックスの怒涛の展開は息が詰まるほどです。OPの曲も最初のほうがゆっくりでサビが激しい構成になっていて似ている気がします。最終回ではOPがなかったんですが、クライマックスか始まってからは前半のゆっくりとした曲が合わないからでしょうね。

殺し合いの中で印象に残っているのは小椋ですね。このアニメって死ぬシーンがそのキャラの見せ所みたいなところがあって作画も丁寧なんですが、そうなってくるとちょっとエッチになってしまうんですよね。足を滑らせて死ぬだけならそんなことはないと思うんですけど、足を滑らせてからふとももを桟にぶつけて、頭から落ちてブリッジのような体勢で死ぬってなかなかですよ。もし吉良吉影が『Another』を観て勃起してたら杜王町が本当に酷いことになっていたと思います。

あと杉浦の死ぬシーンも印象に残っていて、あのひと続きの場面で杉浦は「私じゃないわよ」と言いながら恒一を刺して登場するんですよね。その後も圧倒的な強さを見せながら恒一をボコボコにするんですよね。赤沢のお気に入りだから殺さないであげると言ってるけど赤沢のお気に入りだからボコボコにしてる感じもあります。で猛烈な勢いで見崎に襲いかかるときに露出したコードに誤って首をかけて首を吊るかたちになって死亡。このシーンももがき苦しみながら体液を撒き散らして死ぬのがむごくて印象的です。

途中バックドラフトで生徒が死にましたね。このシーンでバックドラフトという言葉を初めて知った気がします。それまで活躍があったわけではなく死ぬためだけに用意されたキャラで、哀愁がありますね。

最終回に移ると、色んなキャラが死んでいきますね。バックドラフトで死んだキャラはセリフがありましたけどセリフもないまま死んでいくキャラまでいます。

この回は司書の千曳が活躍しますよね。狂った管理人を倒したり風見にトドメを刺そうとする赤沢を止めたり。僕はこのキャラが割と好きで、3年3組の担任を続けられはしないが責任を感じて司書として学校に留まっているというね。ずっと死の教室を見守り続けてきたこともあってかなり達観している感じがしているんですよね。

風見はアニメの最初のほうは出番が多かったけど途中から出番が少なくなるという不思議なキャラでしたね。恒一を死者だと思っていたから、そして5月の犠牲者である桜木のことで恨んでいたから、〈現象〉が始まって以降は恒一と付き合わないようにしていたんでしょうね。久しぶりに喋ったと思ったら殺人鬼として登場するなんて。

風見が死んで勅使河原が「なんでだよ」と悔しがっていましたが、お前が言うのかと思いますね。一回殺しかけただろとね。

で赤沢の死のシーンはすごいですよね。ガラス片が飛んできて磔にされたようになって死ぬんですが、それが美しい。対策係としてのプレッシャーや友人の死もあって、そして勘違いで友人を死なせたことになっている見崎鳴を思いを寄せている恒一が庇いつづけることもあってかなり狂っていて、風見にトドメを刺そうとしたのとか狂気の沙汰でしかない。

このアニメってたくさんの人間が死ぬから、見飽きないように死ぬシーンも色んなパターンがあるんですよね。最近が階段で足を滑らせて開いた傘の先端に首が刺さって死ぬシーンですげえやべえんですけど、赤沢のシーンはかなり優遇されてますね。記憶がフラッシュバックしながら綺麗な音楽が流れてその姿が映されるという。最後に恒一に初めて会った時のことを聞いて、覚えてないよと無下にされるのも含めてかなりいいですね。

そして三上怜子を殺すシーンは、種明かしもあってかなり重い場面ですね。主人公が亡くなった母親を重ねていた叔母を殺すのを最後にもってくるのはすごいですね。恒一は心臓に持病があったのか、ピッケルを振り下ろした後に倒れていて、放送当時は恒一も死んだのかと思った記憶があります。

合宿が終わった後に見崎鳴と会話しながら歩いていくシーンで「忘れたくない」というようなことを言っていましたが、幼いころに夜見山に来たきりで一年半前に怜子の葬式で夜見山に来たということは、怜子の記憶は中学三年の今のものがほとんどのはずで、この年の記憶がなくなるということは怜子のことはほとんど忘れてしまうということなんですよね。母親にそっくりということもあって重ねていたところは多いでしょうし、殺すのはかなり心苦しかったでしょうね(それだけに自分の手でとも思ったはず)。

このアニメってEDもそうですが「記憶」というのは一つのテーマかもしれませんね。〈現象〉が始まると紛れた〈死者〉のことを忘れるし、〈現象〉が終わると紛れていた〈死者〉のことを忘れてしまう。でも赤沢や怜子の同級生もそうだったように〈現象〉に反して思い出すこともある。

〈現象〉が終わるとその年紛れていた〈死者〉のことを忘れるというのは、誰も三上怜子のことを忘れていてこの〈現象〉が終わったんだなという確信を視聴者に与えるものになっていますね。この構造は面白いと思います。

このアニメは夜や雨といった暗い場面が多いんですが、最後の場面は日の光に包まれてとても明るかったですね。これでは「浄化」しきれないアニメだったとは思いますが。

初めてアニメを追いかけながらものを書きましたが、結構楽しかったですね。また何か書くかもしれません。それでは